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慢性腎臓病 について

(CKD:Chronic Kidney Disease)

慢性腎臓病(CKD)とは?

世界中で腎臓の働きが低下し、腎移植や透析治療などを必要とする患者さん(末期腎不全患者)が増加する一方です。慢性腎臓病(CKD)とはその数を減らすために米国で考案された新しい疾患概念です。「末期腎不全に至る患者さんの特徴は何であるか?」を統計学的に解析していくことにより、リスク因子を明らかにし、それを持っている患者さんを早期に見つけ出して治療を行うことを目的としています。

定義

① 尿異常、画像診断、血液検査、病理診断で腎障害の存在が明らか、特に0.15g/gCr以上の蛋白尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)の存在が重要
② GFR<60mL/分/1.73㎡

① 、②のいずれか、または両方が3カ月を越えて持続する。

CKDの重症度の評価法

腎機能とは?

CKDは腎機能と蛋白尿・アルブミン尿を評価することによって、重症度が決まります。腎機能とはいったい何でしょうか? (尿のつくられかた) 尿は初めに腎臓の糸球体で血液をろ過してつくられます。このろ過されたばかりの尿を原尿といい、健康な成人では一日あたり144Lつくられますが、 99%は腎臓の尿細管で体内に吸収されます。この1分間につくられる原尿の量を糸球体濾過量(Glomerular Filtration Rate; GFR)といい、腎機能の指標としています。

a. 腎機能の評価法

CKDは腎機能(GFR)と蛋白尿・アルブミン尿を評価することによって、重症度を判定します。厳密なGFRは煩雑なイヌリンクリアランスという方法で測定しますが、簡便なGFRの指標として、血液中の老廃物のクレアチニンという物質の濃度や、クレアチニンクリアランスという血中濃度と尿に排出されるクレアチニンの量からGFRを推定する方法が行われてきました。血液中のクレアチニン濃度は軽症のCKDを見逃しやすく、クレアチニンクリアランスは尿を一日溜める(蓄尿)必要があること、真のGFRよりも高い値が出やすいという欠点があります。 この問題を解決するため考え出されたのが、推算糸球体濾過量(eGFR)です。年齢とクレアチニン、性別からイヌリンクリアランスによって得られたGFRの値に近くなる数式で計算されます。

男性のeGFR=194×血清クレアチニン(mg/dL)-1.094×年齢(歳)-0.287(mL/分/1.73㎡) 女性のeGFR=男性のeGFR×0.739(mL/分/1.73㎡) (この式は18歳以上で計算すること)

b. eGFRをどのように使うか?

腎機能(eGFR)を大きくステージG1からG5までのステージに分けて、生活習慣や治療法についての指針がしめされています。ステージ3は45でさらにaとbに分けられています。CKDのステージは、以下の表のように分けられます。

GFR区分

(mL/分/1.73㎡)

ステージ

     状態

eGFRの値

G1

正常または高値

≧90

G2

正常または軽度低下

60~89

G3a

軽度~中等度低下

45~59

G3b

中等度~高度低下

30~44

G4

高度低下

15~29

G5

高度低下または末期腎不全

<15

c. CKDステージを決めるもう一つの指標、蛋白尿(アルブミン尿)

正常の状態では血液中の大切な蛋白質は尿中に出てきません。尿に蛋白が出てくるのは「今、腎臓が壊れている」ことを示しています。尿蛋白が多いほど、腎臓の障害は重篤で、その後の経過もよくありません。
わが国の健康保険では、尿中アルブミンは糖尿病でしか測定が認められていないため、糖尿病性腎臓病以外では、蛋白質の総量が測定されます。一日当たりの排泄量を測定することがすすめられますが、尿を一日分ためるのは大変なので、一度だけ採取された尿(スポット尿)の蛋白(アルブミン)の濃度と尿中のクレアチニン濃度を同時に測定し、

一日尿蛋白(アルブミン)排泄量≒{スポット尿の蛋白(アルブミン)濃度}÷{スポット尿のクレアチニン濃度}
スポット尿の蛋白濃度、スポット尿のアルブミン濃度、スポット尿のクレアチニン濃度

で近似させることができます。
尿から排泄される量が多いほど重症のため、下の表のように蛋白(アルブミン)排泄量から3段階(A1, A2, A3)に重症度を分類します。

原疾患

蛋白尿区分

A1

A2

A3

糖尿病関連腎臓病

尿アルブミン定量(mg/日)

正常

微量アルブミン尿

顕性アルブミン尿

尿アルブミン/クレアチニン比(mg/gCr)

30未満

30~299

300以上

糖尿病以外の疾患

尿蛋白定量 (g/日)

正常(

軽度蛋白尿

(±)

高度蛋白尿

(+)以上

尿蛋白/クレアチニン比 (g/gCr)

0.15未満

0.150.49

0.50以上

d. eGFR(G)と蛋白尿(アルブミン尿)(A)の指標を組み合わせた重症度の評価法

これまで、GFRによるG1~G5と蛋白尿(アルブミン尿)によるA1~A3の2つのCKD患者さんのランク付けを説明しました。ほんとうの重症度判定は、GとAを組み合わせて評価します。 縦軸にG1、2、3a、3b、4、5を、横軸にA1、2、3の表をつくります。すると下の表ができます。

 

A1 (-)

A2 (+/-)

A3 (+)~

G1  >90

   

G2  69~89

   

G3a 45~59

   

G3b 30~44

   

G4 15~29

   

G5 <15

   

G1~G5ついてはeGFRの値、Aについては、試験紙による簡単な尿検査の結果を当てはめる目安をしめしています。 真のCKD重症度は、この表に患者さんの状態を当てはめて決定します。

e. CKD重症度(ステージ)の使い方

1) 専門医を受診すべきか?
専門医を受診すべきか、否かは先の表をつかって判定します。
① 緑の患者さん:かかりつけ医で診療
② 赤の患者さん:専門医を受診する
③ 黄色の患者さん:40歳未満あるいは血尿が陽性なら専門医受診です。

2) 治療法の決定
CKDの治療法には、ステージ毎に決められた診療指針=「このように治療を行いましょう」という治療法の目安があります。ステージが進行・色分けが緑から赤へ近づくごとに治療が濃厚になり、生活制限が厳しくなります。

まとめ

慢性腎臓病(CKD)について、どのような考えで考案されたのか、診断をどのようにするのか、重症度はどのように決定するのかまた、決定されたステージはどのように使われるのかについて簡単にご説明しました。これまでの、疾患の考え方とは全く違いますので、わかりにくい点も多かったと思います。不明な点がありましたら、静岡腎不全研究会へお問い合わせください。