在宅血液透析について
自宅に血液透析の機械と、透析に使用できるようなきれいな水を作る装置を設置して、自宅で血液透析をする治療法です。患者さんは自分で、自分の血管に透析用の針を挿入し、介助者の手助けを得て、透析回路と接続し、透析機械を操作して透析を行います。
2021年末の時点で本邦で約750名、静岡県内で24名が在宅血液透析を施行しています1)。
静岡県で、現在、在宅血液透析の導入が可能な施設は、静岡県立総合病院と静岡済生会総合病院です。
通常の施設における血液透析(施設透析)と比較して、自分自身の生活スタイルに合わせた頻回、長時間の透析を施行することによって、十分な透析量を確保することが出来ます。そのため、食事制限が少なく、よりよい体調を保つことが可能となります。
一方で、以下のようなことが必要となります。
○重篤な病気がなく、安定した血液透析ができること
○自己管理ができて、積極的に治療に取り組めること
○自分で責任をもって、毎回の透析を安全に行うこと
○透析機械の準備、自分の血管への針の穿刺、透析開始、透析終了、針の抜去、止血などを介助者とともに自分で行うため、教育訓練を受けること
○透析施行する際には必ず、介助者が声の届く範囲にいること
○自宅に透析機械やその付属する装置、透析に使うダイアライザーや回路など必要物品を設置、保管するスペースの確保
○透析用の電源や給水、配水設備を整える自宅の改修工事(5~15万程度の自己負担になります)
■ 在宅血液透析をはじめるにあたっての流れ
血液透析のしくみや透析施行の流れを理解していただくために、まず半年以上の施設透析を経験して頂きます。その間に透析中に血圧低下といったトラブルや体調の変化が頻回に起こるようなことがないかどうかも確認します。
教育訓練は20回、外来通院もしくは入院で行います。約1〜3ヶ月かかります。
透析に必要な手技を身につけるためのマニュアルを用意していますので、それを見ながら訓練を受けていくことになります。すべての訓練を終了し、卒業テストを合格すれば、在宅血液透析を開始することができるようになります。
同時に自宅の治療環境を整えます。透析用の電源や給水、配水の場所を確認し、ベッド、透析機械や必要な物品を保管するスペースの配置を決定します。
在宅血液透析の外来は、基本的には月1回の通院となります。
透析条件を調整し、薬、貧血の注射、透析液を処方します。ダイアライザー、血液回路などは自分で持って帰ることになります。
■ 在宅血液透析を中止する場合
以下の場合は在宅血液透析を終了することになり、施設透析に戻ることになります。
○透析中に血圧低下、不整脈などの体調の不具合が頻回に起こる場合
○介助者が毎回介助するのが難しくなった場合
○教育訓練に沿った、必ず守ってもらうべき事項が守れない場合
○そのほか、在宅血液透析継続が困難と判断される事情が生じた場合
(介助者、家族にとって過度の負担になっている場合、透析手技に問題が生じたり、計算、記憶力が低下した場合、管理する施設が定める管理可能な以外へ転居した場合など)
● 施設透析の長所と短所
長所
- 十分に尿毒素を取り除くことができる。
- 余分な水分をしっかり除去できる。
- 患者さん自身で行う手技がほとんどない。
- 透析時間以外は自由に行動でき、国内外の出張および旅行が基本的に可能である。
※ただし、旅行先および出張先に血液透析ができる病院があることが前提である。
短所
- 週3回通院
- 施設のスケジュールや規則に従う必要がある
- 決められた治療時間のため(多くの場合は1回4時間透析)、1回の透析にかかる体の負担が比較的大きい
- 食事・飲水制限が多い
● 在宅血液透析の長所と短所
長所
- 透析時間を調節し、自分の生活スタイルに合わせやすい
- 十分な透析ができるため、毒素、余分な水分がたまりにくい
- 食事や飲水の制限が少ない
- 通院は基本的に月 1回
短所
透析を自分で行うため、教育訓練を受ける必要がある
介助者が透析するときに常に必要
機械や物品の設置保管場所が必要
機械設置にあたり自宅の改修工事が必要
透析にかかる電気代や水道代がかかる (1〜2万円/月程度)
医療廃棄物を捨てるのに費用がかかる場合がある
(ダイアライザーや回路は燃えるゴミの日に捨てる場合が多いですが、居住地のゴミ処理を担当する役所に確認が必要)
手技ができなくなったり、計算、記憶力低下があったりすると中止し、施設透析に戻らなければならない